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軽井沢の見どころが多い有名建築10選|アオイノハコが行く建築旅

室生犀星記念館

皆様こんにちはアオイノハコの横山です。夏休みを利用して、軽井沢へ二泊三日の建物見学の旅へ出かけました。軽井沢には、見どころの多い有名建築が数多く存在します。今回は、その中でも特に印象に残った建物をご紹介いたします。

初日の午前中は仕事が入っており、午後に名古屋を出発した為、夜19時過ぎに軽井沢へ到着。一日目は移動のみとなりました。見学したかったいくつかの建物の徒歩圏内にある旧軽井沢エリアのホテルに宿泊、二日目の朝から建物見学です。

二日目は主に車で移動するエリアを巡りました。まずは星野エリアへ、教会と川沿いに店舗が立ち並ぶハルニレテラスを見学、遅い昼食をとった後、軽井沢千住博美術館へ。セゾン現代美術館(設計:菊竹清訓建築設計事務所)は2026夏まで長期休館中の為、見学できませんでした。

①軽井沢高原教会(星野遊学堂) 設計:不明

地面ギリギリまで達する深い切妻屋根がかかった三角形のファサードが特徴的です。正面は細かい格子のデザインが端正な佇まい。瓦型の鋼板製の屋根で覆われています。

教会内部は細い木材の登り梁が連続しており、正面の窓からは森の樹々の緑と光が差し込んで厳かな空間でした。流れるようなデザインのチャーチチェアも必見です。

教会内は撮影禁止の為、添付の写真は隣に建つ建物です。こちらは、花のアトリエが入っており、結婚式の記念写真や、サマーキャンドルナイトの様子を展示したギャラリーのスペースとなっています。

軽井沢高原協会

②ホテルブレストンコート・プライベートコテージ 設計:東環境・建築研究所/東利恵

軽井沢高原教会で挙式された方に向けたゲストルームがコンセプト。教会の脇に建っており、宿泊者以外は立ち入り禁止なので、外観と出入り口からチラリとコンクリート打ち放しの連続した柱の庭を拝見しました。

東氏の「記念日など特別な日に滞在する二人が人生を考え、自分を見つめ、相手を見つめる場所として設計した」にふさわしい凛とした空気感が漂っていました。

ホテルブレストンコートコテージ | WORKS | 東 環境・建築研究所/東 利恵

ホテルブレストンコート・プライベートコテージ

③石の教会(内村鑑三記念堂) 設計:ケンドリック・ケロッグ

石造りの小道を抜けると突如現れる石のアーチ群、重なるアーチは人が生まれてから大人になるまでが表現されており、アーチの間からは柔らかな光が射し込みます。

礼拝堂正面の南に面した窓からは常に光が射し込む設計となっています。窓の外は林の樹々が風にそよそよとゆれています。

自然との調和を目指すオーガニック建築にふさわしく、礼拝堂内部の壁面も石積みでつくられており、壁面を流れ落ちる水の音、壁面は植物や苔が覆い、澄んだ空気が漂う神聖な空間でした。

教会を出たあと、林の中を抜ける石畳の道も素敵でした。礼拝堂の椅子は全て形状長さが異なっており、ケンドリック・ケロッグの友人である建築家ジョン・バーグによってデザインされ、本人の手によって造られたものだそうです。

石の教会 内村鑑三記念堂

④ハルニレテラス 設計:東環境・建築研究所/東利恵・オンサイト

計画設計事務所既存のハルニレを避けて湯川沿いに9棟の木造建築群が立ち並ぶ商業施設。地形に合わせてウッドデッキが敷かれ、湯川を眺めながらくつろぐ事が出来るベンチの配置や、階段にはスロープが併設されています。

車椅子やベビーカーにもやさしく様々な世代が、森を散策するように楽しめるランドスケープデザイン。建物の外壁仕上げは木板貼、屋内天井は構造が現しとなっており、インテリアデザインの一部となっています。

https://www.azuma-architects.com/works/restaurant-shop/harunire-terrace/

⑤軽井沢千住博美術館 設計:西沢立衛建築設計事務所

美術家、千住博の作品約100点が所蔵された私設美術館。草木に覆われたアプローチを進むと、ひっそりと佇むエントランスが現れます。チケットを購入して自動ドアが開くと、視界いっぱいに白く開放的な展示室が広がります。

緩やかに傾斜する床から天井まである湾曲した筒状のガラスの中には、空に向かって植物が伸びている庭が展示室内に4箇所あります。

自然光が射しこむ4つの庭の間を、縫うように点在する、構造壁と思われる壁が作品の展示場所となっており、壁の表裏に掲示されているため、広い空間内を漂うように見学していきます。

順路がなく、美術館というより水族館のようなレイアウトで、所々に白く華奢なベンチが設けられていますので、自分のペースでゆっくり見学することができるのも魅力です。

湾曲したガラスに沿った溝が床に設けられ、その溝が空調の吹き出し口となっていました。

https://www.senju-museum.jp/www.senju-museum.jp/

軽井沢千住博美術館

軽井沢千住博美術館

軽井沢千住博美術館


三日目は、ホテルから徒歩圏内を巡りました。

⑥脇田和アトリエ山荘 設計:吉村順三 ⑦脇田美術館設計:脇田和

洋画家脇田和がアトリエを併設した自宅を、東京藝術大学で共に教鞭をとっていた吉村順三に設計依頼したものです。

元々こちらの敷地は杉苔の生えた湿地だったということを考慮して、一階部分のほとんどはピロティとなっており、二階の床スラブまでが鉄筋コンクリート造、その上の木造二階部分が生活空間とアトリエ空間となっています。

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

建物内部は限られた日のみの公開となっている為、今回の訪問では外観のみの見学です。中庭に向かって両腕を広げて囲む様な形状配置で建っており、さらに連続窓によって水平ラインが強調されています。

現在は中庭を中心にして、山荘に向かい合わせで美術館が配置されていますが、建設当初は正面に針葉樹の森があり、食堂や居間でくつろぐ視線の先の景色を考慮して軒の出が決められたそうです。

軒裏にも天井板が張られ、室内の船底天井からつながる仕掛けとなっているそうです。ぜひ公開日に訪れて体感したいです。。。

室内の天井には地元産のカラマツ材が使われていると知り、タクシーの運転手さんから聞いた軽井沢の道路沿いに自生しているカラマツ林の奥が別荘エリアという話と繋がりました。

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

表通りから少し入った静かな環境に佇む脇田美術館の立地、通りに面したファサードはアールの外壁の美術館棟と、脇田和の次男で彫刻家・造形作家だった愛二郎の作品が、手前の車止めも一つ一つ形が違って素敵です。

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

美術館内にも中庭にも、随所に愛二郎の作品が散りばめられており、親子それぞれの作品が大変見ごたえのある内容でした。

美術館の基本設計は、脇田和自身によるもので、特に外壁に沿って緩やかにカーブした階段を上がると、二階は自然光による採光と、柱のない大空間が広がります。

ピアノが置いてあり、こちらでコンサートの企画もされるようでした。空間の真ん中に、アトリエ山荘内部のつくりがよく分かる建築模型の展示もあります。

大空間の展示室の脇にある細い通路を通って、展示室2とミュージアムショップのある別棟へ。

細い通路には遊び心のある作品や収集コレクションの数々と、通路の地窓からはアトリエ山荘と中庭を見下ろすことができ、違った角度から山荘を眺める事ができます。

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

ミュージアムショップはコンパクトではありますが、建築書などが充実しており、魅力的です!

什器として置いてあったサイドテーブルがとても素敵で、思わずスタッフの方に尋ねたら、「開館当初からあり、詳しくは分からないが天板の部分が陶器製なので愛二郎さんの作品かもしれない」とのお話でした。

購入した小冊子『吉村順三脇田和アトリエ山荘脇田美術館内1970』を見ていたら、内観写真にジョージ・ナカシマ(親交があったそうです)がデザインした椅子と共にそのサイドテーブルが写っていました!

ご自宅で愛用されていたものだったのですね・・・愛二郎デザインでしょうか?脇田和は、映画で話題となった『君たちはどう生きるか』吉野源三郎の原作本の挿絵を描いたそうです。本が我が家にもあるので急に身近に感じてしまいました!

https://www.wakita-museum.com/index_02.html

https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/595279

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

脇田和アトリエ山荘 脇田美術館設計

⑧軽井沢聖パウロカトリック教会 設計:アントニン・レーモンド

二日目に見学した二つの教会(①③)とは違い、地域に根差した温かみのある建築、この地の人々によって運営維持されている様子が随所に見て取れる場所でした。

礼拝堂は、人々に愛されるほっこり落ち着く空間。杉丸太の構造材、クロスした梁や野地板が現しになっており経年変化によって深く色付いた様子が山小屋のような素朴な雰囲気です。

軽井沢聖パウロカトリック教会

入口から入ると頭上にはパイプオルガン、すぐ脇の木製らせん階段から上ります。らせん階段に沿ってクロス型や丸型の模様がくり抜かれた装飾板が貼ってあり、可愛らしい。

外部の尖塔も愛嬌のある形でした。とても細かい銅板葺きの屋根の職人技には目を見張ります。

レーモンドは、帝国ホテルの建設で、フランク・ロイド・ライトと共に助手として来日し、その後外交官としても活躍し、日本滞在中に多くの大使館・大学も手掛けており、先述の吉村順三など多くの建築家も輩出しています。

偉大な建築家が日本の大工と共に建てた教会は、意外な程素朴だけれど、永く愛され続ける存在感のある建物でした。

軽井沢聖パウロカトリック教会

⑨涼の音

国の登録有形文化財に認定された建物で営業されているカフェ。ランチに利用予定でしたが、売り切れてしまい残念ながら今回は断念。。。https://suzunone.main.jp/history.html

旧軽井沢Cafe涼の音

涼の音

⑩室生犀星記念館

大正期から昭和中期にかけて活躍した日本文学を代表する詩人・小説家が夏に過ごした家です。建物の中に入ることはできませんが、建具が全開になっている為、縁側より建物内を見る事が出来ます。

建物手前にある日本庭園の苔が大変美しく、必見です。※涼の音⑨の向かい側にあります。

室生犀星記念館 開館時間・入館料等のご案内 - 軽井沢町公式ホームページ(生涯学習課)

室生犀星記念館

室生犀星記念館

室生犀星記念館

室生犀星記念館

⑪軽井沢の山荘 設計:吉村順三

写真や記事、図で何度も目にしていた建物。個人所有の建物の為、敷地に入ることは叶いませんので道路から通りすがりにチラリと見るだけにとどまりましたが、それでも森の中に溶け込むようにひっそりと佇む姿は想像以上でした。


8月の終わりに何とか時間をつくり訪れた軽井沢、時間が足りなく今回は見送った場所は、次の機会にぜひ訪問したいと思います。

最後に今回の視察を通じて得られた多くの学びや刺激を、これからの住宅建築の中にも積極的に取り入れていきたいと考えております。

軽井沢で感じた豊かな自然との調和や空間の工夫を、皆さまの住まいづくりに活かしてまいります。